第7回(2021年度)
受賞者
佳作
日本郵便大賞
受賞作品一覧
大賞
佳作
【五木寛之賞】 小泉浪士さん (74歳/長崎県)
スーパーのレジが、突然セルフ方式になり、係の女性達が一斉に消えた。
年金生活の我の唯一の楽しみは、週に一回、勝負服を着てバスで街へ買物に行くこと。
そしてレジで働く彼女達に会うこと。
言葉を交わし、時にはレシートの受渡しで指が触れ、ワクワクすることもあった。
省力化は時流なれど、友のいない独居老人には大ショック。
神様、マドンナ達の解雇を禁止する旨の「御告げ」を!
選考委員からの
コメント
ショートショート、あるいはオー・ヘンリーの短編のような作品。
生活の切り取り方にセンスがあります。
【村山由佳賞】 大町芙美さん (74歳/埼玉県)
帰りたい。
今日も86才のHさんが訴える。
職員がどんなに心を砕いてお世話をしてもその声は次第に悲痛になる。
あなたの帰りたい場所は何処ですか?
杏の花の美しい故郷ですか?
追随してYさんも「私も帰りたい」と既にバッグを提げている。
神様
あなたにしか出来ません
それぞれの想いの場所へ
思い切り自由な時へ
どうか皆さんを運んであげて下さい。
外出許可はとります。
選考委員からの
コメント
介護をする立場から自分にできることを模索している姿が浮かび上がります。
そして他人事ではない、という気持ちが伝わってきます。
【齋藤 孝賞】 木村レツさん (79歳/秋田県)
「富士山を近距離で見たい」
少し大袈裟に言えば、これが私の人生最後の願いだ。
私は、生まれも育ちも秋田県南部、冬は雪に閉ざされる豪雪地帯に住んで、まもなく80歳になる。
残念ながら、日本人として生を受けたのに一度も富士山の勇姿を拝んだことがない。
テレビや映画では、数えきれない程見ている富士山を身近で見てみたい。
秋田には、「秋田富士」といわれる「鳥海山」があり、朝夕ながめては「日本一高い富士山は、どの位大きいのだろう」と強く憧れている。
選考委員からの
コメント
私は静岡出身で富士山を見て育ったので、富士山の縁で賞を贈りたいと思います。
そして、この受賞をきっかけに富士山をぜひ見てもらいたい。
雪の降らない静岡とは全く違う豪雪地帯で生きてこられた方の作品であり、逆にこの作品を読んで「秋田富士」と呼ばれる鳥海山を見たいと思いました。
日本郵便大賞
郵便名柄館賞
作品集を希望される方へ
受賞作、最終候補作を収載した作品集が
NHK出版から刊行されています。
以下よりご購入いただけます。
選考委員からの
コメント
「軍団」というユーモラスな表現を用いつつ、孤立や孤独が論じられている現代において家族制度の良い部分が示された作品。
99歳の姑の一言は感謝の言葉でしょう。
短い文章に人生がつまっています。
共感される作品だと思います。