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第9回(2023年度)

受賞作品一覧

大賞

大賞

宮脇克弘さん (64歳/埼玉県)

浩がついに店を閉めた。
真ちゃんもトラックの運転席から降りた。
みんな昔は悪童で、
会社員がムリなら自分でやるだけ、と。
還暦過ぎても「オレらに定年はない」と
踏ん張ってきたけど、その日は突然来た。
家族の介護とか、ガソリンの高騰とか、
インボイス制度とか。
立ち止まる理由はそれぞれにある。
けど、人生はまだまだ。
前へ進むだけを、前進とは言わない、と私は思う。
立ち止まっても、振り返っても前進はある。
あるよなあ、神様。

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選考委員賞

選考委員賞 【五木寛之賞】

【五木寛之賞】 加藤房子さん (78歳/茨城県)

「会いたい! 私は生きています」
生まれは満州白城子、昭和二十年二月。
父は、仕事で不在、引きあげ船に乗らなければ
命の保証は得られません。
四才の兄と母は私を連れにげる途中 
過酷な事に遭遇し、私は仮死状態に、
母は涙し、道端で、穴を掘り私を葬る事に。
その時、心臓に耳を傾け、動いていたのでしょう。
葬るのをやめました。
それを見ていた、御婦夫が子供を亡くされ
粉ミルクを二缶下さり
私は日本に帰る事が出来ました。
御家族に会いたいです。
私は生きています。
      合掌

「会いたい! 私は生きています」 生まれは満州白城子、昭和二十年二月。 父は、仕事で不在、引きあげ船に乗らなければ 命の保証は得られません。 四才の兄と母は私を連れにげる途中  過酷な事に遭遇し、私は仮死状態に、 母は涙し、道端で、穴を掘り私を葬る事に。 その時、心臓に耳を傾け、動いていたのでしょう。 葬るのをやめました。 それを見ていた、御婦夫が子供を亡くされ 粉ミルクを二缶下さり 私は日本に帰る事が出来ました。 御家族に会いたいです。 私は生きています。       合掌

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「会いたい! 私は生きています」 生まれは満州白城子、昭和二十年二月。 父は、仕事で不在、引きあげ船に乗らなければ 命の保証は得られません。 四才の兄と母は私を連れにげる途中  過酷な事に遭遇し、私は仮死状態に、 母は涙し、道端で、穴を掘り私を葬る事に。 その時、心臓に耳を傾け、動いていたのでしょう。 葬るのをやめました。 それを見ていた、御婦夫が子供を亡くされ 粉ミルクを二缶下さり 私は日本に帰る事が出来ました。 御家族に会いたいです。 私は生きています。       合掌
選考委員賞 【村山由佳賞】

【村山由佳賞】 緑川正子さん (73歳/長野県)

『私の指は、このままで』
私は73才。
3才年上の夫と山国で暮らしています。
車もない。
歩いて行けるスーパーも病院もない。
頼りたい娘たちは、300キロ離れた都会にいます。
私のたった1つの楽しみは、寝る前に夫が布団に正座して「もうらしいなあ」と、私の曲がって腫れた指を指圧してさすってくれることです。
ヘバーデン結節の指が、このまま治らないでほしいと密かに願っています。

『私の指は、このままで』 私は73才。 3才年上の夫と山国で暮らしています。 車もない。 歩いて行けるスーパーも病院もない。 頼りたい娘たちは、300キロ離れた都会にいます。 私のたった1つの楽しみは、寝る前に夫が布団に正座して「もうらしいなあ」と、私の曲がって腫れた指を指圧してさすってくれることです。 ヘバーデン結節の指が、このまま治らないでほしいと密かに願っています。

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『私の指は、このままで』 私は73才。 3才年上の夫と山国で暮らしています。 車もない。 歩いて行けるスーパーも病院もない。 頼りたい娘たちは、300キロ離れた都会にいます。 私のたった1つの楽しみは、寝る前に夫が布団に正座して「もうらしいなあ」と、私の曲がって腫れた指を指圧してさすってくれることです。 ヘバーデン結節の指が、このまま治らないでほしいと密かに願っています。
選考委員賞 【齋藤 孝賞】

【齋藤 孝賞】 清水 空さん (24歳/神奈川県)

スプレーで固くまとめた髪。シワのないスーツ。
少し高めのヒール。これが私の戦闘服。
教師になって三年目。
セクハラ パワハラ当たり前。
弱くいるな染まっちゃう。
「女らしくない。」と聞こえたら、にっこりスマイル向けてやる。
「女だから仕方ない。」そんな言葉に負けんな私。
見栄とハッタリ上等じゃ!
私の願いは一つだけ。唯一の希望の君達へ。
らしさに染まらず、らしくいて。

スプレーで固くまとめた髪。シワのないスーツ。 少し高めのヒール。これが私の戦闘服。 教師になって三年目。 セクハラ パワハラ当たり前。 弱くいるな染まっちゃう。 「女らしくない。」と聞こえたら、にっこりスマイル向けてやる。 「女だから仕方ない。」そんな言葉に負けんな私。 見栄とハッタリ上等じゃ! 私の願いは一つだけ。唯一の希望の君達へ。 らしさに染まらず、らしくいて。

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スプレーで固くまとめた髪。シワのないスーツ。 少し高めのヒール。これが私の戦闘服。 教師になって三年目。 セクハラ パワハラ当たり前。 弱くいるな染まっちゃう。 「女らしくない。」と聞こえたら、にっこりスマイル向けてやる。 「女だから仕方ない。」そんな言葉に負けんな私。 見栄とハッタリ上等じゃ! 私の願いは一つだけ。唯一の希望の君達へ。 らしさに染まらず、らしくいて。

日本郵便大賞

日本郵便大賞

飯田 力さん (10歳/大阪府)

ぼくは、毎日自分の部屋のベットで寝ます。
でも、パパは僕が寝に行ったらもう寝ているんです。
しかも、ぼくのベットで!
だからぼくは、パパがぼくのベットで寝ている時は床に布団をしき、寝ます。
でも布団よりベットの方がぐっすり眠れるし、寝心地も良いので、ぼくは「やめて!」と言いますが、もう遅くてパパはいびきをかいてぐっすり寝ています。
朝起きて、言っても「別に良いじゃん」と言ってごまかしています。
パパやめて! 
でもぼくはパパのことが好きです。

ぼくは、毎日自分の部屋のベットで寝ます。 でも、パパは僕が寝に行ったらもう寝ているんです。 しかも、ぼくのベットで! だからぼくは、パパがぼくのベットで寝ている時は床に布団をしき、寝ます。 でも布団よりベットの方がぐっすり眠れるし、寝心地も良いので、ぼくは「やめて!」と言いますが、もう遅くてパパはいびきをかいてぐっすり寝ています。 朝起きて、言っても「別に良いじゃん」と言ってごまかしています。 パパやめて!  でもぼくはパパのことが好きです。

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ぼくは、毎日自分の部屋のベットで寝ます。 でも、パパは僕が寝に行ったらもう寝ているんです。 しかも、ぼくのベットで! だからぼくは、パパがぼくのベットで寝ている時は床に布団をしき、寝ます。 でも布団よりベットの方がぐっすり眠れるし、寝心地も良いので、ぼくは「やめて!」と言いますが、もう遅くてパパはいびきをかいてぐっすり寝ています。 朝起きて、言っても「別に良いじゃん」と言ってごまかしています。 パパやめて!  でもぼくはパパのことが好きです。
日本郵便大賞

浅沼幸来さん (11歳/東京都)

パパはいつもスーパーで半額になった物を買う。
争奪戦に行こうと言い、わざわざ遅い時間に私を連れて行きます。
半額になるまで待ち続け、シールが貼られた瞬間かごに入れます。
最初はおもしろかったのですが、待ち時間が長いので疲れます。
そして何より、私が食べたい物より、半額になった物を買うのでとても嫌な気持ちです。
神様どうか、定価で買えるようにしてあげてください。
それか、私の好きな物を半額にしてください。

パパはいつもスーパーで半額になった物を買う。 争奪戦に行こうと言い、わざわざ遅い時間に私を連れて行きます。 半額になるまで待ち続け、シールが貼られた瞬間かごに入れます。 最初はおもしろかったのですが、待ち時間が長いので疲れます。 そして何より、私が食べたい物より、半額になった物を買うのでとても嫌な気持ちです。 神様どうか、定価で買えるようにしてあげてください。 それか、私の好きな物を半額にしてください。

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パパはいつもスーパーで半額になった物を買う。 争奪戦に行こうと言い、わざわざ遅い時間に私を連れて行きます。 半額になるまで待ち続け、シールが貼られた瞬間かごに入れます。 最初はおもしろかったのですが、待ち時間が長いので疲れます。 そして何より、私が食べたい物より、半額になった物を買うのでとても嫌な気持ちです。 神様どうか、定価で買えるようにしてあげてください。 それか、私の好きな物を半額にしてください。
日本郵便大賞

西尾祐哉さん (21歳/鳥取県)

理科教師になりたい。
そう思い立って八年経とうとしている。
どうせやるなら楽しい先生。
そのためにはまず自分が楽しまなきゃ。
好きを楽しく語り伝染させる。
オタクのような先生になりたい。
だから大学は農学部を選んだ。
教と農の二足の草鞋。
疲れた教育実習。
だが、その倍以上に楽しかった教育実習。
理科が好き、教えるのが好き、笑顔が好き。
現在農学部四年、教職大学院への進学を目指す。
教育愛の実践化。
掲げ続けたテーマの答えをこの道で見つけたい。

理科教師になりたい。 そう思い立って八年経とうとしている。 どうせやるなら楽しい先生。 そのためにはまず自分が楽しまなきゃ。 好きを楽しく語り伝染させる。 オタクのような先生になりたい。 だから大学は農学部を選んだ。 教と農の二足の草鞋。 疲れた教育実習。 だが、その倍以上に楽しかった教育実習。 理科が好き、教えるのが好き、笑顔が好き。 現在農学部四年、教職大学院への進学を目指す。 教育愛の実践化。 掲げ続けたテーマの答えをこの道で見つけたい。

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理科教師になりたい。 そう思い立って八年経とうとしている。 どうせやるなら楽しい先生。 そのためにはまず自分が楽しまなきゃ。 好きを楽しく語り伝染させる。 オタクのような先生になりたい。 だから大学は農学部を選んだ。 教と農の二足の草鞋。 疲れた教育実習。 だが、その倍以上に楽しかった教育実習。 理科が好き、教えるのが好き、笑顔が好き。 現在農学部四年、教職大学院への進学を目指す。 教育愛の実践化。 掲げ続けたテーマの答えをこの道で見つけたい。
日本郵便大賞

中原功寛さん (37歳/熊本県)

祖母は極度の心配性だ。
留学を決意した私に
「葬式は帰ってこんでよか」
二十年後、地元に戻り起業の傍ら農業を手伝う私に
「銀行はクビになったとかい?」
心配かけまいと
「コロナでリモートワークになったとよ」
と嘘をついたが、地元紙に写真付きで私の仕事のことが取り上げられたのを祖父が見つけ祖母に見せたようだ。
「あた、とつけむにゃあことばすんね。
心配でいつ死んでいいか分からんよ」
九十三歳の祖母。
もう少し心配させるから長生きしてね

祖母は極度の心配性だ。 留学を決意した私に 「葬式は帰ってこんでよか」 二十年後、地元に戻り起業の傍ら農業を手伝う私に 「銀行はクビになったとかい?」 心配かけまいと 「コロナでリモートワークになったとよ」 と嘘をついたが、地元紙に写真付きで私の仕事のことが取り上げられたのを祖父が見つけ祖母に見せたようだ。 「あた、とつけむにゃあことばすんね。 心配でいつ死んでいいか分からんよ」 九十三歳の祖母。 もう少し心配させるから長生きしてね

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祖母は極度の心配性だ。 留学を決意した私に 「葬式は帰ってこんでよか」 二十年後、地元に戻り起業の傍ら農業を手伝う私に 「銀行はクビになったとかい?」 心配かけまいと 「コロナでリモートワークになったとよ」 と嘘をついたが、地元紙に写真付きで私の仕事のことが取り上げられたのを祖父が見つけ祖母に見せたようだ。 「あた、とつけむにゃあことばすんね。 心配でいつ死んでいいか分からんよ」 九十三歳の祖母。 もう少し心配させるから長生きしてね
日本郵便大賞

高橋 愛さん (38歳/宮城県)

昨年末、施設暮らしの祖母がコロナで逝った。
九十八歳。
最後に会えたのは、その一年前。
施設入口での十五分。
車椅子姿で、赤ちゃんだった長男を抱いてくれた。
祖母の台所仕事をみるのが好きだった。
茶碗蒸し、ぬた餅、アケビの味噌詰め……。
訃報を知りわんわんと泣いていた時、抱きしめてくれたのは長男だった。
おばあちゃん、優しい子に育っているよ。
あれから、次男も産まれたよ。
祖母の味、息子達にも必ず伝えたい。

昨年末、施設暮らしの祖母がコロナで逝った。 九十八歳。 最後に会えたのは、その一年前。 施設入口での十五分。 車椅子姿で、赤ちゃんだった長男を抱いてくれた。 祖母の台所仕事をみるのが好きだった。 茶碗蒸し、ぬた餅、アケビの味噌詰め……。 訃報を知りわんわんと泣いていた時、抱きしめてくれたのは長男だった。 おばあちゃん、優しい子に育っているよ。 あれから、次男も産まれたよ。 祖母の味、息子達にも必ず伝えたい。

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昨年末、施設暮らしの祖母がコロナで逝った。 九十八歳。 最後に会えたのは、その一年前。 施設入口での十五分。 車椅子姿で、赤ちゃんだった長男を抱いてくれた。 祖母の台所仕事をみるのが好きだった。 茶碗蒸し、ぬた餅、アケビの味噌詰め……。 訃報を知りわんわんと泣いていた時、抱きしめてくれたのは長男だった。 おばあちゃん、優しい子に育っているよ。 あれから、次男も産まれたよ。 祖母の味、息子達にも必ず伝えたい。
日本郵便大賞

箕輪琴恵さん (53歳/千葉県)

夜、うたた寝していたら急に君に起こされた。
明日の就職面接の練習台になって、と言う。
眠い目をこすり向き合って座った。
するとそこに今まで見たことのない顔をした君がいた。
どんな思いで勉強や部活をやり通したのか、これからどう生きたいのか。
ずっと知りたかったことが今、私の目の前にあった。
もう君はとっくに一人で立っていたんだね。
泣きそうになり慌てて老眼鏡をかけ直す。
神様、明日から母ちゃんも頑張って子離れするので、時々こんなご褒美を下さい。

夜、うたた寝していたら急に君に起こされた。 明日の就職面接の練習台になって、と言う。 眠い目をこすり向き合って座った。 するとそこに今まで見たことのない顔をした君がいた。 どんな思いで勉強や部活をやり通したのか、これからどう生きたいのか。 ずっと知りたかったことが今、私の目の前にあった。 もう君はとっくに一人で立っていたんだね。 泣きそうになり慌てて老眼鏡をかけ直す。 神様、明日から母ちゃんも頑張って子離れするので、時々こんなご褒美を下さい。

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夜、うたた寝していたら急に君に起こされた。 明日の就職面接の練習台になって、と言う。 眠い目をこすり向き合って座った。 するとそこに今まで見たことのない顔をした君がいた。 どんな思いで勉強や部活をやり通したのか、これからどう生きたいのか。 ずっと知りたかったことが今、私の目の前にあった。 もう君はとっくに一人で立っていたんだね。 泣きそうになり慌てて老眼鏡をかけ直す。 神様、明日から母ちゃんも頑張って子離れするので、時々こんなご褒美を下さい。
日本郵便大賞

福島千佳さん (53歳/奈良県)

5月に母を亡くして2カ月。
ようやく気持ちの整理がつき、残された妹とカラオケに行った。
母の大好きだった、山口百恵「秋桜(コスモス)」を選び、椅子の上に立ち、「お母さんに捧げます~!!」なんて、調子に乗って歌い出した。
ワンフレーズ目で泣き出す妹。
わたしも母を思い出し、歌どころではなくなった。
「秋桜(コスモス)」のメロディが流れるカラオケボックスで、いい年をした娘2人、母を想ってギャンギャン泣いた。
号泣しながら歌った「秋桜(コスモス)」、
お母さんに届いていますように。

5月に母を亡くして2カ月。 ようやく気持ちの整理がつき、残された妹とカラオケに行った。 母の大好きだった、山口百恵「秋桜(コスモス)」を選び、椅子の上に立ち、「お母さんに捧げます~!!」なんて、調子に乗って歌い出した。 ワンフレーズ目で泣き出す妹。 わたしも母を思い出し、歌どころではなくなった。 「秋桜(コスモス)」のメロディが流れるカラオケボックスで、いい年をした娘2人、母を想ってギャンギャン泣いた。 号泣しながら歌った「秋桜(コスモス)」、 お母さんに届いていますように。

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5月に母を亡くして2カ月。 ようやく気持ちの整理がつき、残された妹とカラオケに行った。 母の大好きだった、山口百恵「秋桜(コスモス)」を選び、椅子の上に立ち、「お母さんに捧げます~!!」なんて、調子に乗って歌い出した。 ワンフレーズ目で泣き出す妹。 わたしも母を思い出し、歌どころではなくなった。 「秋桜(コスモス)」のメロディが流れるカラオケボックスで、いい年をした娘2人、母を想ってギャンギャン泣いた。 号泣しながら歌った「秋桜(コスモス)」、 お母さんに届いていますように。
日本郵便大賞

阿部德彦さん (54歳/宮城県)

あれから、もう十二年も経つ。
東日本大震災の日、俺は仙台にいて、
故郷石巻に、リュックに救援品を満載にして向ったのは、三日目の朝。
津波で流された車が転がる、ぬかるんだ道を歩き続けて、やっと家族と再会。
「母ちゃん!!」と四十過ぎの男が母親と抱き合って泣いた。
……その横で親父がムスッとした顔で一言。
「遅かったな」
後は家族皆で泣き笑い。
その両親も八十を越えた。
どうかいつまでも元気でいて下さい。

あれから、もう十二年も経つ。 東日本大震災の日、俺は仙台にいて、 故郷石巻に、リュックに救援品を満載にして向ったのは、三日目の朝。 津波で流された車が転がる、ぬかるんだ道を歩き続けて、やっと家族と再会。 「母ちゃん!!」と四十過ぎの男が母親と抱き合って泣いた。 ……その横で親父がムスッとした顔で一言。 「遅かったな」 後は家族皆で泣き笑い。 その両親も八十を越えた。 どうかいつまでも元気でいて下さい。

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あれから、もう十二年も経つ。 東日本大震災の日、俺は仙台にいて、 故郷石巻に、リュックに救援品を満載にして向ったのは、三日目の朝。 津波で流された車が転がる、ぬかるんだ道を歩き続けて、やっと家族と再会。 「母ちゃん!!」と四十過ぎの男が母親と抱き合って泣いた。 ……その横で親父がムスッとした顔で一言。 「遅かったな」 後は家族皆で泣き笑い。 その両親も八十を越えた。 どうかいつまでも元気でいて下さい。
日本郵便大賞

岩本智子さん (59歳/東京都)

84歳認知症の父は、40kmも離れた
施設をぬけ出し、山の中を彷徨い
突然帰って来ました。
上着のポケットは、土産の木の実でパンパン。
手には、よその家で咲いていたらしい
根付きのフリージア。
ニコニコしながら、動揺する母の手を引き、
庭に出ると、二人の結婚記念樹の根本に
それを植えたのでした。
後で、父は、「冠岳(かんむりだけ)」という山を目印に自宅へ向かったと分かりました。
どうか、父がいつまでも「冠岳(かんむりだけ)」の形を忘れませんように。

84歳認知症の父は、40kmも離れた 施設をぬけ出し、山の中を彷徨い 突然帰って来ました。 上着のポケットは、土産の木の実でパンパン。 手には、よその家で咲いていたらしい 根付きのフリージア。 ニコニコしながら、動揺する母の手を引き、 庭に出ると、二人の結婚記念樹の根本に それを植えたのでした。 後で、父は、「冠岳(かんむりだけ)」という山を目印に自宅へ向かったと分かりました。 どうか、父がいつまでも「冠岳(かんむりだけ)」の形を忘れませんように。

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84歳認知症の父は、40kmも離れた 施設をぬけ出し、山の中を彷徨い 突然帰って来ました。 上着のポケットは、土産の木の実でパンパン。 手には、よその家で咲いていたらしい 根付きのフリージア。 ニコニコしながら、動揺する母の手を引き、 庭に出ると、二人の結婚記念樹の根本に それを植えたのでした。 後で、父は、「冠岳(かんむりだけ)」という山を目印に自宅へ向かったと分かりました。 どうか、父がいつまでも「冠岳(かんむりだけ)」の形を忘れませんように。
日本郵便大賞

島村恵美子さん (63歳/埼玉県)

死亡が確認されたその日の内に
大きなポリ袋に無造作に入れられた父の衣服を
病院から渡されて弟が帰ってきた
何気なく開けた時 父の匂いが漂ってきた
私は思わずもう一度縛り直した
匂いが飛んで消えてしまうと感じたからだ
姿、形、声は覚えていても 匂いの記憶は薄っぺらい
暫くの間だけでも 匂いを閉じ込める
魔法の玉手箱が欲しいと思う

死亡が確認されたその日の内に 大きなポリ袋に無造作に入れられた父の衣服を 病院から渡されて弟が帰ってきた 何気なく開けた時 父の匂いが漂ってきた 私は思わずもう一度縛り直した 匂いが飛んで消えてしまうと感じたからだ 姿、形、声は覚えていても 匂いの記憶は薄っぺらい 暫くの間だけでも 匂いを閉じ込める 魔法の玉手箱が欲しいと思う

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死亡が確認されたその日の内に 大きなポリ袋に無造作に入れられた父の衣服を 病院から渡されて弟が帰ってきた 何気なく開けた時 父の匂いが漂ってきた 私は思わずもう一度縛り直した 匂いが飛んで消えてしまうと感じたからだ 姿、形、声は覚えていても 匂いの記憶は薄っぺらい 暫くの間だけでも 匂いを閉じ込める 魔法の玉手箱が欲しいと思う
日本郵便大賞

小寺司美栄さん (66歳/岐阜県)

母は九十一歳。
母の愛犬モモは十四歳。
二人共高齢だ。
母はモモに色んなことを話す。
モモは首を傾げて聞いている。
四年前、母が骨折した時、
家族が帰るまで母の脇で寄り添った。
また、母のリハビリ中、虐められていると思ったか、
モモは、歯を見せて激しく吠えた。
モモを四人目の孫と言う母と、母を守るつもりのモモ。
最近、母はモモに「あんたも歳やね」と
しみじみ言った。
母とモモが、一日も長く元気で
一緒にいられるよう願っています。

母は九十一歳。 母の愛犬モモは十四歳。 二人共高齢だ。 母はモモに色んなことを話す。 モモは首を傾げて聞いている。 四年前、母が骨折した時、 家族が帰るまで母の脇で寄り添った。 また、母のリハビリ中、虐められていると思ったか、 モモは、歯を見せて激しく吠えた。 モモを四人目の孫と言う母と、母を守るつもりのモモ。 最近、母はモモに「あんたも歳やね」と しみじみ言った。 母とモモが、一日も長く元気で 一緒にいられるよう願っています。

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母は九十一歳。 母の愛犬モモは十四歳。 二人共高齢だ。 母はモモに色んなことを話す。 モモは首を傾げて聞いている。 四年前、母が骨折した時、 家族が帰るまで母の脇で寄り添った。 また、母のリハビリ中、虐められていると思ったか、 モモは、歯を見せて激しく吠えた。 モモを四人目の孫と言う母と、母を守るつもりのモモ。 最近、母はモモに「あんたも歳やね」と しみじみ言った。 母とモモが、一日も長く元気で 一緒にいられるよう願っています。
日本郵便大賞

斉藤 毅さん (70歳/北海道)

齢七十にして三度目の母の心音を乞い願う。
母のお腹の中で聞いたであろう
幾千万回の鼓動は記憶には残らない。
母の心音を初めて聞いたのは中学生の時である。
大病を患い入院した母。
周囲からも諦めの声があった時に
坊主頭の私の右耳を胸にあてさせ、
この心臓の音を忘れるなと教えた母さん。
両親・兄姉との沢山の思い出はあるが、
この歳になって深く感じ入る唯一の鼓動。
私の最期の数分間を母の心音で包んで眠らせて欲しい。

齢七十にして三度目の母の心音を乞い願う。 母のお腹の中で聞いたであろう 幾千万回の鼓動は記憶には残らない。 母の心音を初めて聞いたのは中学生の時である。 大病を患い入院した母。 周囲からも諦めの声があった時に 坊主頭の私の右耳を胸にあてさせ、 この心臓の音を忘れるなと教えた母さん。 両親・兄姉との沢山の思い出はあるが、 この歳になって深く感じ入る唯一の鼓動。 私の最期の数分間を母の心音で包んで眠らせて欲しい。

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齢七十にして三度目の母の心音を乞い願う。 母のお腹の中で聞いたであろう 幾千万回の鼓動は記憶には残らない。 母の心音を初めて聞いたのは中学生の時である。 大病を患い入院した母。 周囲からも諦めの声があった時に 坊主頭の私の右耳を胸にあてさせ、 この心臓の音を忘れるなと教えた母さん。 両親・兄姉との沢山の思い出はあるが、 この歳になって深く感じ入る唯一の鼓動。 私の最期の数分間を母の心音で包んで眠らせて欲しい。
日本郵便大賞

石黒以津子さん (77歳/東京都)

裏庭のビワの木は、五十六才で他界した夫の死を覚悟した時、形見になればと彼が口にした種をそっと植えたものです。
以来、ずっと夫と思って語り続けています。
十年後に初めて五十三個の実をつけてくれた時、「俺も頑張っているぞー」という誇らしげな夫の声、顔が浮かび、虫食いの実さえ愛おしく、彼としっかり繋がっている幸せに涙しました。
喜寿を過ぎた私をあなたの母親と見間違わないで下さいよ。
いいですか、再会の合言葉は「ビワ」ですからね。

裏庭のビワの木は、五十六才で他界した夫の死を覚悟した時、形見になればと彼が口にした種をそっと植えたものです。 以来、ずっと夫と思って語り続けています。 十年後に初めて五十三個の実をつけてくれた時、「俺も頑張っているぞー」という誇らしげな夫の声、顔が浮かび、虫食いの実さえ愛おしく、彼としっかり繋がっている幸せに涙しました。 喜寿を過ぎた私をあなたの母親と見間違わないで下さいよ。 いいですか、再会の合言葉は「ビワ」ですからね。

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裏庭のビワの木は、五十六才で他界した夫の死を覚悟した時、形見になればと彼が口にした種をそっと植えたものです。 以来、ずっと夫と思って語り続けています。 十年後に初めて五十三個の実をつけてくれた時、「俺も頑張っているぞー」という誇らしげな夫の声、顔が浮かび、虫食いの実さえ愛おしく、彼としっかり繋がっている幸せに涙しました。 喜寿を過ぎた私をあなたの母親と見間違わないで下さいよ。 いいですか、再会の合言葉は「ビワ」ですからね。
日本郵便大賞

良 正勝さん (80歳/鹿児島県)

   (未完の対局)
私が転勤となって、離れて暮らす難聴の父との通信手段として始めたのが囲碁の葉書対局でした。
葉書にはG8などと盤上の着手位置を書くのですが、父の愛猫のことや私の家族のことも書き添えていました。
対局は開始から二年後に父が脳梗塞で倒れたため一八七手で止まっています。
あれから三十年、私は初手から何度も繰返し棋譜を碁盤に並べ一八八手以降も研究しています。
続きを打ちたいのです。

(未完の対局) 私が転勤となって、離れて暮らす難聴の父との通信手段として始めたのが囲碁の葉書対局でした。 葉書にはG8などと盤上の着手位置を書くのですが、父の愛猫のことや私の家族のことも書き添えていました。 対局は開始から二年後に父が脳梗塞で倒れたため一八七手で止まっています。 あれから三十年、私は初手から何度も繰返し棋譜を碁盤に並べ一八八手以降も研究しています。 続きを打ちたいのです。

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(未完の対局) 私が転勤となって、離れて暮らす難聴の父との通信手段として始めたのが囲碁の葉書対局でした。 葉書にはG8などと盤上の着手位置を書くのですが、父の愛猫のことや私の家族のことも書き添えていました。 対局は開始から二年後に父が脳梗塞で倒れたため一八七手で止まっています。 あれから三十年、私は初手から何度も繰返し棋譜を碁盤に並べ一八八手以降も研究しています。 続きを打ちたいのです。
日本郵便大賞

藤枝 繁さん (83歳/栃木県)

最近 頻尿の恐怖に怯えている。
外出先、バスの中等で急な尿意に襲われ、
死ぬ程の苦しみを体験した。
家族旅行も頻尿が不安で仮病を理由に
辞退したがすぐバレてしまった。
娘が買って来てくれた紙パンツ――
ゴワゴワして格好悪いイメージが拭えず
いやいやながら、穿いてみた。
待てよ…何と言うフィット感、
大きな精神的安定感と不安の解消にびっくり!!
外出、旅行、もう心配なし。
生活は一変した。大空に叫びたい。
「紙パンツパワー有難う、これからも宜しくネー」

最近 頻尿の恐怖に怯えている。 外出先、バスの中等で急な尿意に襲われ、 死ぬ程の苦しみを体験した。 家族旅行も頻尿が不安で仮病を理由に 辞退したがすぐバレてしまった。 娘が買って来てくれた紙パンツ―― ゴワゴワして格好悪いイメージが拭えず いやいやながら、穿いてみた。 待てよ…何と言うフィット感、 大きな精神的安定感と不安の解消にびっくり!! 外出、旅行、もう心配なし。 生活は一変した。大空に叫びたい。 「紙パンツパワー有難う、これからも宜しくネー」

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最近 頻尿の恐怖に怯えている。 外出先、バスの中等で急な尿意に襲われ、 死ぬ程の苦しみを体験した。 家族旅行も頻尿が不安で仮病を理由に 辞退したがすぐバレてしまった。 娘が買って来てくれた紙パンツ―― ゴワゴワして格好悪いイメージが拭えず いやいやながら、穿いてみた。 待てよ…何と言うフィット感、 大きな精神的安定感と不安の解消にびっくり!! 外出、旅行、もう心配なし。 生活は一変した。大空に叫びたい。 「紙パンツパワー有難う、これからも宜しくネー」

郵便名柄館賞

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遠藤賢人さん (7歳/千葉県)

神さま、ぼくとともだちになって
ピカピカの一年生になったら、
ともだち100人できるんでしょ
でもまだできていないの
ともだちになってくれたら
ないしょのはなしおしえてあげる
ドラゴンってしってる?
ママのあだながドラゴンなんだ
これ、ママのママ、バアバアがつけたんだ
ないしょだよ
でもママはやさしいんだ
こわいときもあるけど
ともだちになってくれたら、もっとおしえてあげるね

神さま、ぼくとともだちになって ピカピカの一年生になったら、 ともだち100人できるんでしょ でもまだできていないの ともだちになってくれたら ないしょのはなしおしえてあげる ドラゴンってしってる? ママのあだながドラゴンなんだ これ、ママのママ、バアバアがつけたんだ ないしょだよ でもママはやさしいんだ こわいときもあるけど ともだちになってくれたら、もっとおしえてあげるね

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神さま、ぼくとともだちになって ピカピカの一年生になったら、 ともだち100人できるんでしょ でもまだできていないの ともだちになってくれたら ないしょのはなしおしえてあげる ドラゴンってしってる? ママのあだながドラゴンなんだ これ、ママのママ、バアバアがつけたんだ ないしょだよ でもママはやさしいんだ こわいときもあるけど ともだちになってくれたら、もっとおしえてあげるね
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津田真輝さん (9歳/和歌山県)

「ケータイなんてなくなればいいのに」
と思っています。
なぜかと言うと、ママやパパがケータイばかり見て
勉強も見てくれないしあそんでくれないから、
ケータイがいやです。
つう話きのうだけでいいのに
ほかのアプリがふえてしまったから、
ケータイを大人がすきになってしまったのです。
ケータイよりぼくを見てほしいです。

「ケータイなんてなくなればいいのに」 と思っています。 なぜかと言うと、ママやパパがケータイばかり見て 勉強も見てくれないしあそんでくれないから、 ケータイがいやです。 つう話きのうだけでいいのに ほかのアプリがふえてしまったから、 ケータイを大人がすきになってしまったのです。 ケータイよりぼくを見てほしいです。

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「ケータイなんてなくなればいいのに」 と思っています。 なぜかと言うと、ママやパパがケータイばかり見て 勉強も見てくれないしあそんでくれないから、 ケータイがいやです。 つう話きのうだけでいいのに ほかのアプリがふえてしまったから、 ケータイを大人がすきになってしまったのです。 ケータイよりぼくを見てほしいです。
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萱原大翔さん (14歳/北海道)

友達の弟に
「なんでじゃんけんってパーがグーより強いの?
紙は石で切れるじゃん」って聞いてきた。
その時は、自分もよくわからなくて
「そういうルールだから」って答えた。
でもその弟は、
「ちがうよ、パーはグーを包みこめる優しさがあるから強いんだよ。」って言われた。
その時以降、自分はじゃんけんをする時、なるべくパーをだす。
争いの多いこの世界で自分は「パー」みたいな人になりたい。

友達の弟に 「なんでじゃんけんってパーがグーより強いの? 紙は石で切れるじゃん」って聞いてきた。 その時は、自分もよくわからなくて 「そういうルールだから」って答えた。 でもその弟は、 「ちがうよ、パーはグーを包みこめる優しさがあるから強いんだよ。」って言われた。 その時以降、自分はじゃんけんをする時、なるべくパーをだす。 争いの多いこの世界で自分は「パー」みたいな人になりたい。

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友達の弟に 「なんでじゃんけんってパーがグーより強いの? 紙は石で切れるじゃん」って聞いてきた。 その時は、自分もよくわからなくて 「そういうルールだから」って答えた。 でもその弟は、 「ちがうよ、パーはグーを包みこめる優しさがあるから強いんだよ。」って言われた。 その時以降、自分はじゃんけんをする時、なるべくパーをだす。 争いの多いこの世界で自分は「パー」みたいな人になりたい。
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前田優有さん (14歳/奈良県)

お父さん。
大きくなったと気づいて下さい。
いつも私のことを「ゆうゆちゃんかわいいなぁ。」
「ほっぺたパクパクしたろ。」
口ぐせのように言っていますが私はもう十四歳。
身長160cm体重45kgを超えた大物です。
いつもスマホでゲームばかりしているから気づいていないのでしょうか。
今、お父さんが昔のように私をだっこしたら間違いなくギックリ腰ですよ。
お父さん。
大きくなったと気づいて下さい。
父の成長を願う娘より

お父さん。 大きくなったと気づいて下さい。 いつも私のことを「ゆうゆちゃんかわいいなぁ。」 「ほっぺたパクパクしたろ。」 口ぐせのように言っていますが私はもう十四歳。 身長160cm体重45kgを超えた大物です。 いつもスマホでゲームばかりしているから気づいていないのでしょうか。 今、お父さんが昔のように私をだっこしたら間違いなくギックリ腰ですよ。 お父さん。 大きくなったと気づいて下さい。 父の成長を願う娘より

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お父さん。 大きくなったと気づいて下さい。 いつも私のことを「ゆうゆちゃんかわいいなぁ。」 「ほっぺたパクパクしたろ。」 口ぐせのように言っていますが私はもう十四歳。 身長160cm体重45kgを超えた大物です。 いつもスマホでゲームばかりしているから気づいていないのでしょうか。 今、お父さんが昔のように私をだっこしたら間違いなくギックリ腰ですよ。 お父さん。 大きくなったと気づいて下さい。 父の成長を願う娘より
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吉原成実さん (29歳/茨城県)

保健室で 死にたい とあなたから伝えられた時
私に何ができるだろうと考えた。
でも実はね、その時私自身も消えてしまいたいと思っていたの。
それから少しでもあなたのことが知りたくて
学び直しのために大学院生になった。
いつのまにか私の中で「知りたい」が「消えたい」をかき消して
一生懸命生きてる
いつかあなたのような生徒をまた保健室で迎えられるように
ちゃんと食べていますか?
寝ていますか?
ちょっとでも笑っていたらいいなぁ

保健室で 死にたい とあなたから伝えられた時 私に何ができるだろうと考えた。 でも実はね、その時私自身も消えてしまいたいと思っていたの。 それから少しでもあなたのことが知りたくて 学び直しのために大学院生になった。 いつのまにか私の中で「知りたい」が「消えたい」をかき消して 一生懸命生きてる いつかあなたのような生徒をまた保健室で迎えられるように ちゃんと食べていますか? 寝ていますか? ちょっとでも笑っていたらいいなぁ

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保健室で 死にたい とあなたから伝えられた時 私に何ができるだろうと考えた。 でも実はね、その時私自身も消えてしまいたいと思っていたの。 それから少しでもあなたのことが知りたくて 学び直しのために大学院生になった。 いつのまにか私の中で「知りたい」が「消えたい」をかき消して 一生懸命生きてる いつかあなたのような生徒をまた保健室で迎えられるように ちゃんと食べていますか? 寝ていますか? ちょっとでも笑っていたらいいなぁ
郵便名柄館賞

片桐恵子さん (39歳/神奈川県)

2013年、父の63歳の誕生日プレゼントに、
肩たたき券を添えた。
裏返すと「2023年~使用可能」の文字。
「使えんじゃないか」と笑わせるための小ネタだった。

2023年。家庭を持った私は、子連れで帰省した。
ニヤけた父が、手に紙を持って出迎えた。
「使うときがきたぞ」と。
まさか10年、捨てずに持っていたとは。

使用済みの券と引き換えに、新しい肩たたき券を贈ろう。
今度は2033年~有効のやつ。
長生きしてよね。

2013年、父の63歳の誕生日プレゼントに、 肩たたき券を添えた。 裏返すと「2023年~使用可能」の文字。 「使えんじゃないか」と笑わせるための小ネタだった。  2023年。家庭を持った私は、子連れで帰省した。 ニヤけた父が、手に紙を持って出迎えた。 「使うときがきたぞ」と。 まさか10年、捨てずに持っていたとは。  使用済みの券と引き換えに、新しい肩たたき券を贈ろう。 今度は2033年~有効のやつ。 長生きしてよね。

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2013年、父の63歳の誕生日プレゼントに、 肩たたき券を添えた。 裏返すと「2023年~使用可能」の文字。 「使えんじゃないか」と笑わせるための小ネタだった。  2023年。家庭を持った私は、子連れで帰省した。 ニヤけた父が、手に紙を持って出迎えた。 「使うときがきたぞ」と。 まさか10年、捨てずに持っていたとは。  使用済みの券と引き換えに、新しい肩たたき券を贈ろう。 今度は2033年~有効のやつ。 長生きしてよね。
郵便名柄館賞

大竹英子さん (58歳/福島県)

私は一生をかけてもご縁のある方に感謝の手紙を書き続けていきたいです。
はじめ中国から嫁いできた私は日本語が全く分からなかったです。
その上足が悪いため夫が何か一つ勉強が出来たらしなさいと言ってくれました。
それを手紙と決め、書いた内容に変な所があったら夫やたくさんの人が直してくれました。
時には人知れず涙をたくさん流しました。
三十年近くになりますが、これからも汗と勇気と涙の力で手紙を書き続けたいです。

私は一生をかけてもご縁のある方に感謝の手紙を書き続けていきたいです。 はじめ中国から嫁いできた私は日本語が全く分からなかったです。 その上足が悪いため夫が何か一つ勉強が出来たらしなさいと言ってくれました。 それを手紙と決め、書いた内容に変な所があったら夫やたくさんの人が直してくれました。 時には人知れず涙をたくさん流しました。 三十年近くになりますが、これからも汗と勇気と涙の力で手紙を書き続けたいです。

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私は一生をかけてもご縁のある方に感謝の手紙を書き続けていきたいです。 はじめ中国から嫁いできた私は日本語が全く分からなかったです。 その上足が悪いため夫が何か一つ勉強が出来たらしなさいと言ってくれました。 それを手紙と決め、書いた内容に変な所があったら夫やたくさんの人が直してくれました。 時には人知れず涙をたくさん流しました。 三十年近くになりますが、これからも汗と勇気と涙の力で手紙を書き続けたいです。
郵便名柄館賞

白土加代子さん (63歳/福岡県)

「さぁ書くばい」の一声響く介護施設の習字の時間。
「私はねぇ、子供の頃から習字を習いたかったんに習えんやったと。
でもね、ついに99歳で習字習えて本当に嬉しいとよ」
と話すカヨさん。
そのシワシワ顔の中の涙いっぱいの瞳に心が掴まれた。
99歳で夢が叶う事を奇跡と呼ぶならば、
どうかそんな素敵な奇跡が日本中のお年寄りの方々に舞い降りますように。
100歳の誕生日直前に他界したカヨさんが残した書「夢」に、あの日見た嬉し涙の瞳が重なる。

「さぁ書くばい」の一声響く介護施設の習字の時間。 「私はねぇ、子供の頃から習字を習いたかったんに習えんやったと。 でもね、ついに99歳で習字習えて本当に嬉しいとよ」 と話すカヨさん。 そのシワシワ顔の中の涙いっぱいの瞳に心が掴まれた。 99歳で夢が叶う事を奇跡と呼ぶならば、 どうかそんな素敵な奇跡が日本中のお年寄りの方々に舞い降りますように。 100歳の誕生日直前に他界したカヨさんが残した書「夢」に、あの日見た嬉し涙の瞳が重なる。

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「さぁ書くばい」の一声響く介護施設の習字の時間。 「私はねぇ、子供の頃から習字を習いたかったんに習えんやったと。 でもね、ついに99歳で習字習えて本当に嬉しいとよ」 と話すカヨさん。 そのシワシワ顔の中の涙いっぱいの瞳に心が掴まれた。 99歳で夢が叶う事を奇跡と呼ぶならば、 どうかそんな素敵な奇跡が日本中のお年寄りの方々に舞い降りますように。 100歳の誕生日直前に他界したカヨさんが残した書「夢」に、あの日見た嬉し涙の瞳が重なる。
郵便名柄館賞

周東光江さん (71歳/神奈川県)

母は、全盲で産まれました。
「この服は、どんな色をしているの?」
と幼い私に聞く母。
私は、精一杯の言葉をつなげて母に伝える。
「紫色が好き」と言った母。
ずっとずっと紫色を知りたかっただろう。
幼い娘に聞いたその色を一目で良いから
自身の目で見たかっただろう。
きっと心の中で紫色を温めていたに違いない。
叶うなら、今、母のいる世界で見せてあげたい。
おかあさん、見えますか 
想像していた色でしたか
まるであなたのような清楚で凛とした
優しい色ですね。

母は、全盲で産まれました。 「この服は、どんな色をしているの?」 と幼い私に聞く母。 私は、精一杯の言葉をつなげて母に伝える。 「紫色が好き」と言った母。 ずっとずっと紫色を知りたかっただろう。 幼い娘に聞いたその色を一目で良いから 自身の目で見たかっただろう。 きっと心の中で紫色を温めていたに違いない。 叶うなら、今、母のいる世界で見せてあげたい。 おかあさん、見えますか  想像していた色でしたか まるであなたのような清楚で凛とした 優しい色ですね。

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母は、全盲で産まれました。 「この服は、どんな色をしているの?」 と幼い私に聞く母。 私は、精一杯の言葉をつなげて母に伝える。 「紫色が好き」と言った母。 ずっとずっと紫色を知りたかっただろう。 幼い娘に聞いたその色を一目で良いから 自身の目で見たかっただろう。 きっと心の中で紫色を温めていたに違いない。 叶うなら、今、母のいる世界で見せてあげたい。 おかあさん、見えますか  想像していた色でしたか まるであなたのような清楚で凛とした 優しい色ですね。
郵便名柄館賞

髙橋やよいさん (91歳/山口県)

手紙の存在を時代おくれだと否定する人が多くなった。
たしかに急を要する連絡は不可能だが喜怒哀楽の極みを伝え得るのは手紙である。
涙で書いた手紙は必ず相手を涙させる。
着かざる事なく普段着のままで書き続けた恩師との文通は、学卒後の私の心と知恵を、どれほど深めてくれたか知れない。
文字の空間を読む楽しさは格別である。
文字の記憶がうすれない限り、心の糧とし支えとして百才に近い恩師の導きと共に情緒豊かな手紙のやりとりを願う私です。

手紙の存在を時代おくれだと否定する人が多くなった。 たしかに急を要する連絡は不可能だが喜怒哀楽の極みを伝え得るのは手紙である。 涙で書いた手紙は必ず相手を涙させる。 着かざる事なく普段着のままで書き続けた恩師との文通は、学卒後の私の心と知恵を、どれほど深めてくれたか知れない。 文字の空間を読む楽しさは格別である。 文字の記憶がうすれない限り、心の糧とし支えとして百才に近い恩師の導きと共に情緒豊かな手紙のやりとりを願う私です。

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手紙の存在を時代おくれだと否定する人が多くなった。 たしかに急を要する連絡は不可能だが喜怒哀楽の極みを伝え得るのは手紙である。 涙で書いた手紙は必ず相手を涙させる。 着かざる事なく普段着のままで書き続けた恩師との文通は、学卒後の私の心と知恵を、どれほど深めてくれたか知れない。 文字の空間を読む楽しさは格別である。 文字の記憶がうすれない限り、心の糧とし支えとして百才に近い恩師の導きと共に情緒豊かな手紙のやりとりを願う私です。

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